2007年08月

2007年08月31日

8月 名歌観賞一覧 (1)

8/1 高き屋に 登りて見れば 煙立つ 民のかまどは
    にぎはひにけり           仁徳天皇
8/2 何処にか われは宿らむ 高島の 勝野の原に
    この日暮れなば           高市黒人 
8/3 露涼し 形あるもの 皆生ける    村上鬼城
8/4 春の苑 紅にほう 桃の花 下照る道に
    出で立つ少女            大伴家持
8/5 世の中は なにか常なる あすか川 昨日の渕ぞ
    今日は瀬になる           読人知らず
8/6 昨日といい 今日と暮らして あすか川 流れてはやき
    月日なりけり            春道別樹
8/7 遅き日の つもりて 遠きむかしかな   蕪村
8/8 松島や 雄島の磯に あさりせし 海人の袖こそ
    かくは濡れしか           源重之
8/9 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれにし
    色はかはらず            殷富門大輔
8/10 唐衣 着つつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる
    旅をしぞ思う            在原業平 
8/11 納豆と 蜆に朝寝 起こされる
8/12 むすぶ手の 雫に濁る 山の井の あかで人に
    別れぬるかな            紀貫之
8/13 消えはつる 時しなければ 越路なる 白山の名は
    雪にぞありける           凡河内みつね
8/14 北へ行く 雁ぞ鳴くなる 連れてこし 数はたらでぞ
    帰るべらなる            読人知らず
8/15 づぶ濡れの 大名を見る 炬燵かな  一茶



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8月 名歌観賞一覧 (2)

8/16 秋の菊 にほふかぎりは かざしてむ 花よりさきと
    知らぬわが身を              紀貫之
8/17 わが宿の 梢の夏に なるときは 生駒の山ぞ
    見えずなりぬる             能因法師
8/18 住江の 松を秋風 吹くからに 声うちそふる
    沖つ白波                凡河内みつね
8/19 行く春や 鳥啼き魚の 目は泪      芭蕉
8/20 人住まぬ 不破の関屋の 板廂 荒れにし後は
    ただ松の風               藤原良経
8/21 小倉山 峰たちならし 鳴く鹿の 経にけむ秋を
    知る人ぞなき              紀貫之
8/22 かにかくに 疎くぞ人の 成りにける 貧しきばかり
    悲しきはなし              木下幸文
8/23 落花枝に かへるとみれば 胡蝶かな   荒木田守武 
8/24 ひともとと 思ひし菊を 大沢の 池のそこにも
    誰か植えけむ              紀友則
8/25 花の木に あらざれめど 咲にけり ふりにし木の実
    なる時もがな              文屋康秀
8/26 あおによし 奈良の都の 咲く花の 薫ふがごとく
    今盛りなり               小野老
8/27 青梅に 眉あつめたる 美人かな     蕪村
8/28 よそにのみ 見てややみなむ 葛城や高間の山の
    峰の白雲                読人知らず
8/29 つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは
    思はざりしを              在原業平
8/30 煙たち もゆとも見えぬ 草の葉を 誰かわらびと
    名づけそめけむ             真静法師
8/31 高麗船の よらで過ぎく 霞かな     蕪村

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高麗船の よらで過ぎ行く 霞かな

高麗船の よらで過ぎ行く 霞かな    蕪村

(こまぶねの よらですぎゆく かすみかな)

意味・・深い霞の垂れ込めた沖合いから目にも鮮やかな
    高麗船が出現した。港に立ち寄るかと胸をとき
    めかしたが、いつしか遠ざかり霞の中に消えて
    しまった。

    海岸の砂丘などにひとり腰をおろして、沖を
    行く船を眺めている時、立派な船が行く。
    どこから来てどこにいくのだろう。何を運んで
    いるのだろうかと夢がふくらむ。

 注・・高麗船=古代朝鮮の高麗国の大船を空想的に
     言ったもの、ここでは単に外国船の意味。

作者・・蕪村=ぶそん。1716~1784。江戸時代中期の
    俳人・南画家。

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2007年08月30日

名歌観賞・125

煙たち もゆとも見えぬ 草の葉を 誰かわらびと 
名づけそめけむ     真静法師(しんせいほうし)

(けぶりたち もゆともみえぬ くさのはを たれか
 わらびと なづけそめけん)

意味・・あの蕨の萌え方を見ていると、煙を上げて
    燃え上がっているのではないのに、いったい
    誰がわら火と名づけたのだろうか。

    蕨の語源はわら火と思われていた。

 注・・もゆ=燃ゆと萌ゆを掛ける。
    わらび=藁を燃やしたわら火と蕨を掛ける。

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2007年08月29日

つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを

つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは
思はざりしを               
                   在原業平

(ついにゆく みちとはかねて ききしかど きのうきょう
 とは おもわざりしを)

意味・・死というものが人生最後の行路だとは前から
    聞かされていたのであるが、それが昨日や
    今日旅立つ道であるとは思ってもいなかった
    なあ。

    詞書に「病して弱くなりける時よめる」とあ
    ります。死は避けられないものと分かってい
    たが、現実のこととして身近にせまり来たと
    いう嘆きを詠んだ辞世の歌です。

 注・・つひにゆく道=終にゆく道、死路の旅。

出典・・古今和歌集・861、伊勢物語125段。
    

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2007年08月28日

名歌観賞・123

よそにのみ 見てややみなむ 葛城や 高間の山の 
峰の白雲              読人知らず

(よそにのみ みてややみなん かつらぎや たかまのやまの
 みねのしらくも)

意味・・自分とは関係のないものとして、遠くから見るだけに
    終わってしまうのだろうか。葛城の高間の山の峰の
    白雲よ(その雲のようなあの人を)。

    心を引かれながら手の届かない高貴な女性に思いを
    はせた歌です。「高間の山の峰の白雲」は崇高な
    美しい女性を象徴しています。

 注・・よそに=親密でない人。他人。
    やみ=止み、お終いになる。
    葛城や高間の山=大阪府と奈良県の境にある連山。
       高間山はその最高峰、金剛山の別称。

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2007年08月27日

青梅に 眉あつめたる 美人かな

青梅に 眉あつめたる 美人かな    蕪村

(あおうめに まゆあつめたる びじんかな)

意味・・見るからに酸っぱい青梅に眉を寄せる
       佳人。それがまた何ともいえない美し
    いしぐさだなあ。

作者・・蕪村=ぶそん。1716~1784。江戸時代
    の俳人・南画家。

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2007年08月26日

名歌観賞・121

あおによし 奈良の都は 咲く花の 薫ふがごとく 今盛りなり
                          小野老

(あおによし ならのみやこは さくはなの におうがごとく
 いまさかりなり)

意味・・奈良の都は、咲いている花が色美しく映えるように、
    今や真っ盛りである。

    華やかな都を賛美した歌です。

 注・・あおによし=奈良に掛る枕詞。
    薫ふ(にほふ)=色が美しく照り映える。

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2007年08月25日

花の木に あらざれめど 咲にけり ふりにし木の実  なる時もがな 

花の木に あらざれめど 咲にけり ふりにし木の実 
なる時もがな              
                 文屋康秀

(はなのきに あらざれめど さきにけり ふりにしこのみ
 なるときもがな)

意味・・花咲く木でもなさそうなのに、これは見事に咲いて
    います。それなら、ついでに古ぼけた木にも果実が
    実る時もほしいものです。

    花の咲くはずがない木に花が咲きました。それならば
    古くなったこの身にも花を咲かせて出世させてほしい
    ものです。

    宮中の渡り廊下に、木で作った造花を飾っているのを
    見て詠んだ歌です。わが身の不遇を訴えています。

 注・・花の木にあらざる=削り花、木を削って作った花のこと。
    めど=「けれども」と「馬道(めどう・めど)」を掛ける。
     馬道は建物と建物の間に厚板で囲った廊下。
    木の実=「この身」を掛ける。
    ふりにし=古にし、年を経るを掛ける。

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2007年08月24日

名歌観賞・119

ひともとと 思ひし菊を 大沢の 池のそこにも 誰か植えけむ
                         紀友則

(ひともとと おもいしきくを おおさわの いけのそこにも
 たれかうえけん)

意味・・菊の花はいけのほとりに一株あるだけと思ったのに、
    大沢の池の底にもう一つあるのは、誰が植えたので
    あろうか。

    水に映った花があまりにも美しいので、水面に映った
    菊を誰が植えたのだろうかと表現したものです。

 注・・ひともと=一本。
    大沢=京都右京区嵯峨にある池。
    池のそこ=池の底、水面に美しく映った菊を池の底に
      あるとみたもの。

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2007年08月23日

落花枝に かへるとみれば 胡蝶かな

1142


落花枝に かへるとみれば 胡蝶かな   
                      荒木田守武

(らっかえだに かえるとみれば こちょうかな)

意味・・桜の花びらがはらりはらりと散り、それがまた不思議な
    事にまた枝に帰ると見えたが、よく見ると花びらでなく
    て、枝に止まる蝶であった。

    謡曲の「落花枝にかへらず、破鏡再び照らさず」を念頭
    に置いた句です。
    この意味は「ひとたび散った花は元の枝に戻れない、
    一旦壊れた男女の仲は元通りにならない」また、「失敗
    は取り返しがつかない」ということです。   

 注・・胡蝶=ちょうちょ。

作者・・荒木田守武=あらきもりたけ。1473~1549。伊勢神宮
    祠官。




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2007年08月22日

名歌観賞・117

かにかくに 疎くぞ人の 成りにける 貧しきばかり
悲しきはなし      木下幸文(きのしたたかふみ) 

(かにかくに うとくぞひとの なりにける まずしき
ばかり かなしきはなし)

意味・・何のかんのといっても、友は貧しい私と疎遠に
    なってしまった。なぜか、それは自分が貧窮の
    境涯にあるからである。貧しいほど人間は悲し
    いことはない。友人達さえも遠ざかってしまう
    のだから。
    
 注・・かにかくに=とにかく。

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2007年08月21日

小倉山 峰たちならし 鳴く鹿の 経にけむ秋を  知る人ぞなき

小倉山 峰たちならし 鳴く鹿の 経にけむ秋を 
知る人ぞなき
                紀貫之

(をぐらやま みねたちならし なくしかの へにけんあきを
 しるひとぞなき)

(を・・・・み・・・・・・な・・・・へ・・・・・・し・・・・)

意味・・小倉の山の峰に立ち、山と馴染みになった鹿の鳴くのが
    聞こえるが、あれで幾年(いくとせ)鳴きとおしたことか。
    誰も知らないが。

    鳴く鹿の声は寂しそうに聞こえます。この鹿の声と、
    帰って来る子を待つ岸壁の母の姿とを重ね合わせて
    います。

    「をみなへし」の字を各句の最初に置いて詠んだ歌です。

 注・・たちならし=立ち慣れし、立って慣れ親しむ。
    経にけむ秋=何年の秋を経たであろうか。



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2007年08月20日

名歌観賞・115

人住まぬ 不破の関屋の 板廂 荒れにし後は
ただ秋の風
             藤原良経(ふじわらのよしつね)
             (新古今和歌集・1601)
(ひとすまぬ ふわのせきやの いたびさし あれにし
 のちは ただあきのかぜ)

意味・・もう関守が住まなくなった不破の関の番小屋の板廂。
    荒れ果ててしまったあとは秋風が吹き抜けるばかりだ。

    かっては威勢がよかったが、荒廃してしまった不破の
    関のありさまに、人の世の無常と歴史の変転をみつめ
    ている。
    
 注・・不破の関屋=岐阜県関ヶ原にあった。675年に開設、
      789年に廃止された。「関屋」は関の番小屋。

作者・・藤原良経=1206年没、38歳。従一位摂政太政大臣。
     「新古今集仮名序」を執筆。

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2007年08月19日

行く春や 鳥啼き魚の 目は泪

行く春や 鳥啼き魚の 目は泪    芭蕉

(ゆくはるや とりなきうおの めはなみだ)

意味・・春が過ぎ去ろうとしているが、それを惜しんで
    鳥は鳴き、魚は目に涙をたたえているかのようだ。
    旅に出る自分も見送る人々も、共に別れを惜しんで
    涙を流している。

    「奥の細道」への旅立ちの始めに詠んだ句です。

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2007年08月18日

名歌観賞・113

住江の 松を秋風 吹くからに 声うちそふる 沖つ白波
                    凡河内みつね

(すみのえの まつをあきかぜ ふくからに こえうちそうる
 おきつしらなみ)

意味・・住江の浜に秋風が吹き、松が快い響きを立てると、
    沖では白波がそれに応じて楽を奏(かな)でている。

    美しい叙景歌です。

 注・・住江=大阪住吉区住吉の入り江。
    松=住江の松原は美しさで有名であった。
    からに=・・とともに。

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2007年08月17日

わがやどの 梢の夏に なるときは 生駒の山ぞ  みえずなりぬる

わがやどの 梢の夏に なるときは 生駒の山ぞ 
みえずなりぬる
                 能因法師

(わがやどの こずえのなつに なるときは いこまのやまぞ
 みえずなりぬる)

意味・・私の家の庭の木の梢が夏を迎えた時は、その茂った
    葉にさえぎられて、生駒山は見えなくなってしまう。

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2007年08月16日

名歌観賞・111

秋の菊 にほふかぎりは かざしてむ 花よりさきと 
知らぬわが身を              紀貫之

(あきのきく におうかぎりは かざしてん はなよりさきと
 しらぬわがみを)

意味・・この菊の花が美しく咲いている間は、挿頭(かざし)に
    さして、気持ちを引き立てることとしょう。花の散る
    のよりひと足先に死ぬかもしれないわが身と思いつつ。

    近親者の急死に遭(あ)って、人の運命のはかない事を
    感じていた時、菊の花を見て詠んだ歌です。

 注・・にほふかぎり=美しい色に咲いている間は。
    かざしてむ=かざしてやろう。「てむ」は決意を表す。
    花より先と知らぬ=花より後まで生きられるかどうか
      分からない。


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2007年08月15日

づぶ濡れの 大名を見る 炬燵かな

づぶ濡れの 大名を見る 炬燵かな    一茶

(づぶぬれの だいみょうをみる こたつかな)

意味・・冬の冷たい雨の中をずぶ濡れの大名行列が通る。
    私は、ぬくぬくと炬燵に当たりながらその行列
    が通り過ぎるのを眺めている。

    この句は権力者である大名行列を皮肉に詠んで
    います。

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2007年08月14日

名歌観賞・109

北へ行く 雁ぞ鳴くなる つれてこし 数はたらでぞ 帰るべらなる
                     読人しらず
                      (古今集・412)

(きたへゆく かりぞなくなる つれてこし かずはたらでぞ 
 かえるべらなる)

意味・・春が来て北国に飛び帰る雁の鳴き声が聞こえてくる。
    あのかなしそうな鳴き声は、日本に来る時には一緒に
    来たものが、数が足りなくなって帰るからなのだろうか。

    この歌の左注に、「この歌の由来は、ある人が夫婦とも
    どもよその土地に行った時、男のほうが到着してすぐに
    死んでしまったので、女の人が一人で帰ることになり、
    その帰路で雁の鳴き声を聞いて詠んだものだ」と書かれて
    います。

 注・・べらなり=・・のようである。

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2007年08月13日

消えはつる 時しなければ 越路なる 白山の名は  雪にぞありける

消えはつる 時しなければ 越路なる 白山の名は 
雪にぞありける
                  凡河内躬恒

(きえはつる ときし なければ こしじなる しろやまの
 なは ゆきにぞありける)

意味・・あの山頂の雪が消えてなくなる時がないので、それで
    越国(こしのくに)の白山という名前は、雪にちなんだ
    ものだったということが分かった。
 
    夏になった今でも雪で真っ白になっている山を見て「あれ
    が山の名前の起源だったのか」と大げさに感心してみせた
    ものです。

 注・・時しなければ=「し」は上接の語を強調する副詞。
     時といものがないのだから。
    越路=越国(現在の越前・越後)の方面。
    白山(しろやま)=石川・岐阜の県境の白山(はくさん)。

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2007年08月12日

名歌観賞・107

むすぶ手の 雫に濁る 山の井の あかでも人に 別れぬるかな
                          紀貫之

(むすぶての しずくににごる やまのいの あかでもひとに
 わかれぬるかな)

意味・・掬(すく)い上げる手からこぼれる雫ですぐに濁ってしまう
    山の井の水は十分に渇きを満たしてくれない。それと同じ
    ように飽き足りないままにあの人と別れてしまった。

    山の中の清水で顔を洗い喉を潤わせていた女性と言葉を
    交わし親しくなったものの、すぐに別れるようになって
    詠んだ歌です。

 注・・山の井=清水を石で囲んであるところ。底が浅いので
         すぐ濁る。
    あかでも=飽かでも、飽きるほど飲めない、不十分。


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2007年08月11日

納豆と 蜆に朝寝 起こされる 

納豆と 蜆に朝寝 起こされる   川柳

(なっとうと しじみにあさね おこされる)

意味・・江戸の長屋住まいで、久しぶりの休みなので
    朝寝坊を決め込んでいる。そこに”なっとう~
    なっとう~”、”蜆はいらんかねぇ~”と朝
    早くから声を掛けて行く。豆腐屋はもちろん
    納豆に蜆売りと朝からにぎやかな声で起こされ
    朝寝坊もできやしない。

    この川柳の背景として、江戸の庶民の生活が
    反映しています。長屋に病人が出れば、渡る
    世間に鬼はないとばかりに、近所の者が食べ物
    や飲み物、あるいは見舞金を包んで集まって来る。
    そして、交代で看病するような長屋独特の温かい
    風景があります。

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2007年08月10日

名歌観賞・105

唐衣 着つつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる 
旅をしぞ思ふ              
            在原業平(ありひらのなりひら)
            (古今集・410、伊勢物語・9段)

(からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる
 たびをしぞおもう)
(か・・・・ き・・・・・・ つ・・・・  は・・・・・・   た・・・・・)

意味・・くたくたになるほど何度も着て、身体になじんだ衣服
    のように、慣れ親しんだ妻を都において来たので、都を
    遠く離れてやって来たこの旅路のわびしさがしみじみと
    感じられることだ。

    三河の国八橋でかきつばたの花を見て、旅情を詠んだ
    ものです。各句の頭に「かきつばた」の五文字を置い
    た折句です。この歌は「伊勢物語」に出ています。

 注・・唐衣=美しい立派な着物。
    なれ=「着慣れる」と「慣れ親しむ」の掛詞。
    しぞ思う=しみじみと寂しく思う。「し」は強調の意
     の助詞。
    三河の国=愛知県。

作者・・在原業平=825~880。従四位上・美濃権守。行平は
     異母兄。「伊勢物語」。

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2007年08月09日

見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず

見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし
色はかはらず     
                  殷富門院大輔

(みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし
 いろはかわらず)

意味・・あなたにみせたいものです。血の涙で赤く染まった
    私の袖を。あの雄島の漁師の袖さえ、波に濡れに
    濡れているけれど、色まで変わっていないのです。

    失恋のつらさから血の涙で袖が赤く染まってしまった、
    それほど深く悲しい恋であったことを詠んでいます。

    本歌は源重之の「松島や雄島の磯にあさりせし海人の
    袖こそかくはぬれしか」です。重之の袖は濡れただけ
    だが、私の袖は濡れたうえに色まで変わってしまったと
    詠んでいます。

 注・・雄島=宮城県の松島湾内の島の一つ。
      色はかはらず=海人(漁師)の袖の色は変わらない。
     言外に、私の袖の色は、血の涙で色が変わってしまっ
     たが、の意をこめています。

作者・・殷富門院大輔=いんぶもんいんのたいふ。1131~1200。
    後白河天皇の皇女・殷富門院に仕える。

出典・・千載和歌集・886。百人一首・90。

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2007年08月08日

名歌観賞・103

松島や 雄島の磯に あさりせし 海人の袖こそ かくは濡れしか
                           源重之

(まつしまや おじまのいそに あさりせし あまのそでこそ
 かくはぬれしか)

意味・・松島の、あの雄島の磯で漁をする漁師でも、
    私の涙で濡れた袖ほどに濡れているだろうか。

    恋人に振られた悲しみ、くやしさの大きさを
    流した涙で表現しています。

 注・・雄島=宮城県松島湾内の島の一つ。
    あさりせし=漁りせし、漁をする。
    海人=あま、漁師。
    袖が濡れる=悲しみや悔しさの涙で袖が濡れる。

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2007年08月07日

遅き日の つもりて遠き むかしかな

遅き日の つもりて遠き むかしかな 
                   蕪村

(おそきひの つもりてとおき むかしかな)

意味・・日の暮れの遅い春の一日、自然と思いは過去に
    向う。昨日もこんな日があり、一昨日もこんな
    日であった。こんな風にして、過去の一日一日
    も過ぎていった。やがて来る残り少ない未来の
    ある一日も、このようにして昔となってゆくだ
    ろう。

    心は遠い昔にはせ、老いの寂しさを詠んでいます。

 注・・つもり=積り、一日一日が積って過去になる。

作者・・蕪村=ぶそん。1716~1783。池大雅と共に南宗画の
    大家。


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2007年08月06日

名歌観賞・101

昨日といひ 今日と暮らして あすか川 流れてはやき
月日なりけり      
            春道別樹(古今和歌集・341) 

(きのうといい きょうとくらして あすかがわ ながれて
 はやき つきひなりけり)

詞書・・年末に詠んだ歌。

意味・・昨日といっては暮らし、今日といっては暮らして、
    また明日になる。飛鳥川の流れのように早い月日
    の流れであったことだ。

    「あすか川」は流れが早く、流路の定まらない
    飛鳥川のこと。「明日」を掛けている。歳末に
    一年を振り返っての感慨を詠んでいます。

 作者・・春道別樹=はるみちのつらき。生没年未詳。
      910年に文章博士になる。壱岐守。

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2007年08月05日

世の中は なにか常なる あすか川 昨日の渕ぞ 今日は瀬になる

世の中は なにか常なる あすか川 昨日の渕ぞ
今日は瀬になる          
                 詠み人しらず

(よのなかは なにかつねなる あすかがわ きのうのふちぞ
 けふはせになる)

意味・・この世の中は、いったい何が変わらないのか、不変の
    ものは何一つない。飛鳥川の流れも昨日渕であった所
    が今日はもう浅瀬に変わっている。

    世の中の移り変わりが速いことを詠んでいます。

 注・・あすか川=奈良県飛鳥を流れる川。明日を掛けている。
    渕=川の深く淀んでいる所。
    瀬=川の浅く流れの早い所。

出典・・古今和歌集・933。

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2007年08月04日

名歌観賞・99

春の苑 紅にほふ桃の花 下照る道に 出で立つ少女
                    大伴家持

(はるのその くれないにおう もものはな したてる
 みちに いでたつおとめ)

意味・・春の庭園に紅の色が美しく映える桃の花、その
    木の下までも照り輝いている道に出て立って
    いる娘さんよ、ともに美しいなあ。

 注・・苑=庭園。

sakuramitih31 at 20:27|PermalinkComments(0)和歌・短歌・俳句 

2007年08月03日

露涼し 形あるもの 皆生ける

露涼し 形あるもの 皆生ける     村上鬼城

(つゆすずし かたちあるもの みないける)

意味・・玉となった朝露をみていると清々しい気持に
    なってくる。この露を得た草花は生き生きと
    している。虫たちも嬉しげに露を吸っている
    ことだろう。

    露の一滴が、縁の下の力持ちとなって、草や
    花、虫たち、そればかりでなく万物を生かして
    いるのだと感動して詠んだ句です。

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2007年08月02日

名歌観賞・97

何処にか われは宿らむ 高島の 勝野の原に 
この日暮なば
           高市黒人(たけちのくろひと)
           (万葉私有・275)
(いずくにか われはやどらん たかしまの かちのの
はらに このひくれなば)

意味・・いったいどこに私は宿ろうか。高島の勝野の原で
    今日のこの日が暮れてしまったならば・・。

    1300年前の万葉集の旅の歌です。
    作者の途方にくれた嘆きを詠んでいます。

    今風に言えば、予約していた飛行機に間に合わ
    なかったとか、最終のバスや電車に間に合わ
    なかった時の心境に似ています。

 注・・高島の勝野=琵琶湖西岸の地。滋賀県高島郡勝野。

作者・・高市黒人=伝不明。700年頃の下級官人で万葉歌人。


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2007年08月01日

高き屋に 登りて見れば 煙立つ 民のかまどは にぎはひにけり

高き屋に 登りて見れば 煙立つ 民のかまどは
にぎはひにけり           
                仁徳天皇

(たかきやに のぼりてみれば けぶりたつ たみの
 かまどは にぎわいににけり)

意味・・高殿に登って遠望すると、炊煙が立ち上がって
    いる。民の釜戸は煮炊きの物が豊になり、暮し
    も楽になった事だ。

    藤原時平の「高殿に登りて見れば天(あめ)の下
    四方(よも)に煙りて今ぞ富ぬる」を念頭に置いた
    歌です。

    仁徳天皇が民の貧困を心配して、三年間、年貢を
    免除したので民の生活が立ち直ったという。

 注・・煙=炊煙。
    民のかまど=民の炊事の煮炊き。

作者・・仁徳天皇=にんとくてんのう。没年未詳。

出典・・新古今和歌集・707。

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