2013年03月

2013年03月31日

名歌鑑賞・2159

何となき 草の花さく 野べの春 雲にひばりの
声ものどけき
           永福門院 
         (永福門院百番御自歌合・10)

(なにとなき くさのはなさく のべのはる くもに
 ひばりの こえものどけき)

意味・・名も無いような雑草の花が咲く野辺の春景色。
    遥かな雲の中でひばりの鳴く声がするのは実
    にのどかだ。   

 注・・何となき=特にどうという事は無い。

作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~1342。
     伏見天皇の中宮。「玉葉和歌集」の代表的
     な歌人。




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2013年03月30日

名歌鑑賞・2158

物思へば 心の春も 知らぬ身に なにうぐひすの 
告げに来つらん
              建礼門院右京大夫 
              (玉葉和歌集・1842)

(ものもえば こころのはるも しらぬみに なに
 うぐいすの つげにきつらん)

意味・・物思いに沈んでいるのでのどかな春が来た
    とも知らず、心の晴れることのない私の所に、
    うぐいすは何を知らせに来たのだろう。

 注・・物思へば=好きな人に思い悩むなど。
    心の春=「心が晴れる」を掛ける。
    うぐいす=「憂く干ず」(つらい涙が乾かない)
     を掛ける。

作者・・建礼門院右京大夫=けんれいもんいんのうきょ
     うのだいぶ。生没年未詳。平安・鎌倉時代の
     歌人。  




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2013年03月29日

名歌鑑賞・2157

のどかにも やがてなり行く けしきかな 昨日の日影
今日の春雨
              伏見院 (玉葉和歌集・18)

(のどかにも やがてなりゆく けしきかな きのうの
 ひかげ きょうのはるさめ)

意味・・早くものどかになって行く様子だなあ。昨日の
    うららかな日差し、今日のこの静かに降る春雨。

 注・・のどかにも=のんびりした陽気、気分。
     やがて=ただちに、すぐさま。
     日影=日光、日差し。

作者・・伏見院=ふしみいん。1265~1317。弟92代天皇。
     鎌倉期の歌人。「玉葉和歌集」を撰集させる。
  


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2013年03月28日

名歌鑑賞・2156

鳥の音に のどけき山の 朝あけに 霞の色は
春めきにけり
            藤原為兼 (玉葉和歌集・9)

(とりのねに のどけきやまの あさあけに かすみの
 いろは はるめきにけり)

意味・・鳥の声ものどかに聞こえて来る山の明け方に、
    たちこめる霞の色はすっかり春らしくなった
    ことだ。

作者・・藤原為兼=ふじわらのためかね。1254~1331。
     華美な振る舞いに武家の反感を買い佐渡に
     流される。「玉葉和歌集」の撰者。

     


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2013年03月27日

名歌鑑賞・2155

木々の心 花ちかからし 昨日けふ 世はうすぐもり
春雨ぞ降る
            永福門院 (永福門院百番御歌合・6)

(きぎのこころ はなちかからし きのうきよう よはうす
 ぐもり はるさめぞふる)

意味・・木々はその心の中で、もうすぐ花を咲かせようと
    思っているらしい。そんな昨日今日、世はうす曇
    り、花を咲かせる春雨が静かに降っている。

    木々の幹はかすかな光沢を帯び、花のつぼみは命
    をはらんで膨らんでいる。春の呼吸のようなもの
    を作者は感じとめて詠んでいます。

作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~1342。伏見
     天皇の中宮。「玉葉和歌集」の代表的歌人。



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2013年03月26日

名歌鑑賞・2154

わがかへる 道はまれなる 故郷に 年々やすく 
雁の行くらん
             藤原為相 (為相百首・11)

(わがかえる みちはまれなる ふるさとに としどし
 やすく かりのゆくらん)

意味・・雁は自分の故郷に帰る道は、一年に一度でめっ
    たに通らないものなのに、どうして毎年毎年あ
    のように楽々と帰って行くのだろう。

作者・・藤原為相=ふじわらのためすけ。1263~1328。
     父は為家、母は阿仏尼。正二位中納言。



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2013年03月25日

名歌鑑賞・2153

ほのぼのと 春こそ空に 来にけらし 天の香具山
霞たなびく        
            後鳥羽院(新古今和歌集・2)

(ほのぼのと はるこそそらに きにけらし あまの
 かぐやま かすみたなびく)

意味・・ほんのりと春が空に来ているらしい。今、
    天の香具山には、あのように霞が棚びいて
    いる。

    香具山を中心に、天地に広がってきている
    春の気配を詠んでいます。

 注・・ほのぼのと=ほんのりと。
    来にけらし=来たらしい。
    天の香具山=奈良県橿原市にある山。「天」
     は美称。

作者・・後鳥羽院=後鳥羽院。1189~1239。82代天皇。
     鎌倉幕府の打倒を企て敗れて隠岐に流される。
     「新古今集」の撰集を命じる。




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2013年03月24日

名歌鑑賞・2152

老いらくの おやのみる世と 祈りこし 我があらましを
神やうくらん
              藤原為家 (続後撰和歌集・573)

(おいらくの おやのみるよと いのりこし わがあらましを
 かみやうくらん)

詞書・・大納言になりて悦(よろこ)び申しに日吉社(ひえのやし
    ろ)にまいりて。

意味・・年老いた父が、(私の昇進を)生きているうちに見るよう
    にと祈ってくださった、私へのかねてからの思いを神様
    は受け入れて下さったのだ。

    所願成就の喜びを込めた歌です。為家任官の半年後に父
    定家は死去する。

 注・・日吉社(ひえのやしろ)=近江国(大津市)の神社。
    老いらくの=老年。父定家80歳。
    みる世=現世、この世で見ること。
    あらまし=予想、予期。前もって思いはかること。

作者・・藤原為家=ふじわらのためいえ。1198~1275。正二位大
     納言。58歳で出家。「続後撰集」「続古今集」の撰集
     に携わった。藤原定家は父。




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2013年03月23日

名歌鑑賞・2151

乙女子が かざしの桜 咲きにけり 袖ふる山に
かかる白雲
           藤原為氏 (続後撰和歌集・70)

(おとめごが かざしのさくら さきにけり そでふる
 やまに かかるしらくも)

意味・・美しい乙女子の頭に飾りとして挿す桜が咲いた
    なあ。そして乙女が袖を振って舞うという袖ふ
    る山にも白雲のように桜が咲いている。

 注・・かざし=挿頭。頭髪や冠に花の枝を飾りとして
     挿す。
    袖ふる山=天理市にある布留山。大和国の歌枕。
     乙女が袖を振るのは舞う姿や人を招く意を含
     める。
    白雲=山に咲いた桜を白雲と見立てたもの。

作者・・藤原為氏=ふじわらのためうじ。1222~1286。
     正二位大納言。藤原定家は祖父。



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2013年03月22日

名歌鑑賞・2150

み吉野の 花のさかりを 今日見れば 越のしらねに
春風ぞ吹く
            藤原俊成 (千載和歌集・76)

(みよしのの はなのさかりを きようみれば こしの
 しらねに はるかぜぞふく)

意味・・この吉野の花の盛りを今日眺めると、あの白雪
    を頂いている越の白嶺に春風が吹いていると思
    われるばかりだ。

 注・・吉野=奈良県吉野町。歌枕。桜の名所。
    越のしらね=富山・石川・福井・岐阜の各県に
     またがる白山。歌枕。

作者・・藤原俊成=ふじわらのとしなり。1114~1204。
     正三位皇太后宮大夫。定家の父。「千載和歌
     集」の撰者。


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2013年03月21日

名歌鑑賞・2149

いにしへの 朽木のさくら 春ごとに あはれ昔と
思ふかひなし
             源実朝 (金槐和歌集・709)

(いにしえの くちきのさくら はるごとに あわれ
 むかしと おもうかいなし)

意味・・朽木となった昔の桜は、春ごとに、ああ、昔
    は美しく咲いただろうに、と偲ばせるが、今
    や見る甲斐もないことだ。

作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1218。
     28歳。12歳で鎌倉幕府の征夷大将軍となる。
     鶴岡八幡宮で暗殺される。


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2013年03月20日

名歌鑑賞・2148

浅緑 花もひとつに 霞つつ おぼろに見ゆる
春の夜の月
          菅原孝標女 (新古今和歌集・56)

(あさみどり はなもひとつに かすみつつ おぼろに
 みゆる はるのよのつき)

意味・・浅緑色の霞に桜の花も一つになって霞み、おぼ
    ろに見える春の夜の月、その風情に心が惹かれ
    ます。

    春と秋のどちらの情趣に心が惹かれるかと論争
    した折に詠んだ歌です。、

 注・・浅緑=薄緑、霞んでいる空の色をいった。
    花も=桜の花も。

作者・・菅原孝標女=すがはらのたかすえのむすめ。生
     没年未詳。1060頃の人。「更級日記」の著者。



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2013年03月19日

名歌鑑賞・2147

はたなかの かれたるしばに たつひとの うごくともなし
ものもふらしも
              会津八一 (南京新唱)

(畑なかの 枯れたる芝に 立つ人の 動くともなし
 もの思ふらしも)

詞書・・平城宮址の大極芝にて。

意味・・畑の中の枯れた大極殿址の芝に立つ人は
    動こうともせずじっと佇んでいるが、け
    だし物思いに耽っているのであろう。

    奈良時代の大極殿の址が、今見ると「畑
    なかの枯れた草」であることに、感慨を
    催して詠んだ歌です。

 注・・平城宮・大極殿=今の奈良県生駒郡に710
     年頃造営され、784年長岡京に遷都され
     るまで70年間、奈良の都として繁栄した。
    大極殿芝=大極殿址の土壇に生えている草。

作者・・会津八一=あいづやいち。1881~1956。早
     大文科卒。文学博士。美術史研究家。歌
     集「鹿鳴集」「南京新唱」。  
    



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2013年03月18日

名歌鑑賞・2146

降りつみし 高ねのみ雪 解けにけり 清滝川の
水の白波
            西行 (新古今和歌集・27)

(ふりつみし たかねのみゆき とけにけり きよたき
 がわの みずのしらなみ)

意味・・降り積もった高嶺の雪が解けたのだなあ。清滝川
    の水が烈しく立てている白波は。

 注・・み雪=「み」は語調を整える接頭語。
    清滝川=京都の愛宕山の東を南流し大井川に合流。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1191。



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2013年03月16日

名歌鑑賞・2144

たづねつる 宿は霞に うづもれて 谷の鶯
一声ぞする
           藤原範永 (後拾遺和歌集・23)

(たずねつる やどはかすみに うずもれて たにの
 うぐいす ひとこえぞする)

意味・・霞に埋もれた家を訪ねあてると、折から谷の
    鶯の一声が聞こえて来る。

作者・・藤原範永=ふじわらののりなが。生没年未詳。
     正四位摂津守。



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名歌鑑賞・2145

来ん世には 心の中に あらはさん あかでやみぬる
月の光を
           西行 (千載和歌集・1023)

(こんよには こころのうちに あらわさん あかでや
 みぬる つきのひかりを)

意味・・来世には心の中に現そう。この世ではいくら
    見ても見飽きることのなかった月の光を。

    月輪観(がちりんかん)を詠んでいます。「求
    道者が、己の心は円満な月の如く、円満清浄
    であって、その光明があまねく世界を照らす
    と観ずる法をいう。密教では誰もが本来仏性
    を具有すると説く。その仏性は様々なものに
    邪魔されて普段は隠れているけれども、努力
    して障害を取り除けば本有の仏性が現れて、
    誰でも覚者になり得ると教える。この本有の
    仏性を心月輪(しんがちりん)ともいう」、すな
    わち「行者が自己の内奥に満月の如く輝く仏
    性が存在することを自覚するための観法」。

 注・・心の中にあらはさん=心中に月を現ずる。心
     月輪(しんがちりん)。心が月のごとく円満
     清浄に輝いていると自覚すること。月輪観
     による表現。
    あかでやみぬる=この世で最後まで見飽きず
     に終わったの意。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1191。俗名佐藤義
     清。下北面の武士として鳥羽院に仕える。
     1140年23歳で財力がありながら出家。出家
     後京の東山・嵯峨のあたりを転々とする。
     陸奥の旅行も行い30歳頃高野山に庵を結び
     仏者として修行する。家集「山家集」。



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2013年03月15日

名歌鑑賞・2143

隅々に残る寒さやうめの花
             
           与謝蕪村 (蕪村全句集・126)

(すみずみに のこるさむさや うめのはな)

詞書・・すりこ木で重箱を洗ふごとくせよとは、政
    (まつりごと)の厳刻なるをいましめ給ふ。
    賢き御代の春にあふて。

意味・・春になって、梅が開花したとはいえ、冬の
    寒さが世間のあちらこちらに残っている。

    世間隈なく春なれかしと仁政を期する寓意
    句。

 注・・すりこ木で重箱を洗ふ= 大井利勝による
    戒めの言葉「丸き木にて角なる器の中をか
    きまわす如くにあれば事よき事なり。丸き
    器の内をまはす如く隅々まで探せば事の害
    出来候ぞ」による。
    賢き御代=新しい帝の治政。

作者・・与謝蕪村=よさぶそん。1716~1783。南宗
     画の大家。



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2013年03月14日

名歌鑑賞・2142

道のべの 朽木の柳 春くれば あはれ昔と
しのばれぞする
          菅原道真 (新古今和歌集・1449)

(みちのべの くちきのやなぎ はるくれば あわれ
 むかしと しのばれぞする)

意味・・道のほとりの朽ちかけた柳の古木も、春が来る
    と、ああ、昔は盛んに茂っていたよと偲ばれる。

    左遷された我が身を朽木の柳に譬え、過去の栄
    華を追想している。

 注・・朽木の柳=朽ちかけた柳。老女の色香を柳に譬
     える。道真の境遇も譬える。

作者・・菅原道真=すがわらのみちざね。845~903。従
     二位右大臣。代表的漢詩人。讒言(ざんげん・
     事実を曲げて人を悪く言う事)により大宰府に
     左遷された。
    


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2013年03月13日

名歌鑑賞・2141

散りぬとも 香をだにのこせ 梅の花 恋しきときの
思ひいでにせん
          詠み人しらず (古今和歌集・48)

(ちりぬとも かをだにのこせ うめのはな こいしき
 ときの おもいいでにせん)

意味・・たとい散ってしまおうと、せめて枝に香だけ
    でも残してくれ、梅の花よ。恋しい時の思い
    出にしょうと思うので。

 注・・思ひいで=思ひ出で。思い出。




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2013年03月12日

名歌鑑賞・2140

頼もしき 誓ひは春に あらねども 枯れにし枝も
花ぞ咲きける
           平時忠 (千載和歌集・1238)

(たのもしき ちかいははるに あらねども かれにし
 えだも はなぞさきける)

詞書・・観音の誓いを思ひて侍(はべり)ける。

意味・・頼もしい観音への祈願は、春ではなくとも枯枝
    にも花を咲かせるものだ。
    観音に祈願するとどんな病気でも治るものだ。

    どんな病気でも必ず治る、必ず治して見せると
    いう気の持ち方が、自己治癒力を高めるという。

 注・・観音の誓い=仏や菩薩が人の病気を治し救おう
     とする願い。
    枯れにし枝・・=どんなに病んでいてもきっと
    治るの意。

作者・・平時忠=たいらのときただ。1130~1189。正二
     位・大納言。平氏滅亡後能登に流される。




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2013年03月11日

名歌鑑賞・2139

昔たれ かかる桜の 花を植えて 吉野を春の
山となしけん
          藤原良経 (新勅撰和歌集・58)

(むかしたれ かかるさくらの はなをうえて よしのを
 はるの やまとなしけん)

意味・・桜といえば吉野というように、吉野は桜で有名な
    山になっているが、昔々この桜を植えて有名にし
    たのは一体誰なのだろうか。

作者・・藤原良経=ふじわらのよしつね。1169~1206。従
     一位太政大臣。新古今集の仮名序作者。



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2013年03月10日

名歌鑑賞・2138

朝夕に 花待つころは 思ひ寝の 夢のうちにぞ 
咲きはじめける
           崇徳院 (千載和歌集・41)

(あさゆうに はなまつころは おもいねの ゆめの
 うちにぞ さきはじめける)

意味・・朝に夕に花の咲くのを待つ頃は、思い寝の夢
    の中では、花は咲き始めている。

 注・・朝夕に花待つ=一日中、花(乙女)を思いつつ。
    思ひ寝=人を思いつつ寝ること、花を思いな
     がら寝ることの両意。

作者・・崇徳院=すとくいん。1119~1164。平安時代
     後期の天皇。保元の乱で破れ讃岐に流され
     る。西行・藤原俊成と親交。




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2013年03月09日

名歌鑑賞・2137

かすが山 ふもとの芝生 踏みありく しかのどかなる
神やしろかな
            橘曙覧 (橘曙覧全歌集・384)

(かすがやま ふもとのしばふ ふみありく しか
 のどかなる かみやしろかな)

意味・・春日山の麓にある春日神社の原っぱでは、鹿
    がのどかに歩いている。そのような神社の境
    内の景観はいいものだ。

 注・・かすが山=奈良の春日神社。
    しか=「鹿」とそのようにの「然」との掛詞。

作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1866。福井
     藩主と親交。家業の紙商を弟に譲り隠棲。



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2013年03月08日

名歌鑑賞・2136

冬の夜の いくたびばかり ね覚めして 物おもふ宿の
ひましらむらん
           増基法師 (後拾遺和歌集・392)

(ふゆのよの いくたびばかり ねざめして ものおもう
 やどの ひましらむらん)

意味・・この冬の夜寒にいったい何べんほど目が覚めたら、
    物思いをして熟睡出来ないでいる、私の住まいの
    板戸の隙間が白んで夜が明けるというのであろう
    かなあ。

 注・・宿のひま=我が家の板戸の隙間。
    しらむ=夜が明けて白む。

作者・・増基法師=ぞうきほうし。伝未詳。歌集「増基法
     師集」。


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2013年03月07日

名歌鑑賞・2135

霞立つ 春の初めを 今日のごと 見むと思へば
楽しとぞ思ふ
          大伴池主 (万葉集・4300)

(かすみたつ はるのはじめを きょうのごと みんと
 おもえば たのしとぞおもう)

詞書・・大伴家持の宅で氏族が集まって宴を催した時に詠
    んだ歌。

意味・・霞の立ち込める春の初めのよき日、この先も毎年
    今日のようにお会い出来るかと思うと、本当に楽
    しゅうございます。

    新春の一族の宴に、これから先も、毎年加われる
    喜びを詠んでいます。

作者・・大伴池主=おおとものいけぬし。生没年未詳。家
     持の歌友。左京小進(地方の三等官)。



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2013年03月06日

名歌鑑賞・2134

谷風に とくる氷の ひまごとに 打ちいづる波や
春の初花
            源当純 (古今和歌集・12)

(たにかぜに とくるこおりの ひまごとに うち
 いずるなみや はるのはつはな)

意味・・早春の谷風で解け始めた川の氷の隙間隙間
    から流れ出て来る波こそ、春の最初の花な
    のでしょう。

    春の訪れを川のせせらぎに見出し、それを
    花にたとえた歌です。

作者・・源当純=みなもとのまさずみ。生没年未詳。
     903年従五位上・少納言になった。


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2013年03月05日

名歌鑑賞・2133

春なれば 花の馬酔木も 咲きにけり 母とはなりし
そのかみの子よ
            濱田盛秀 (新万葉集・巻六)

(はるなれば はなのあしびも さきにけり ははとは
 なりし そのかみのこよ)

意味・・今は春なので、馬酔木の木も、枝々に壺状の白
    い花をいっぱい咲かせている。嫁いで行っても
    う幸せな母になっている、あの頃の娘(こ)よ。

    嫁いで行き人妻となり、子供を生み、今は幸せ
    な母となっている昔の恋人のことを、長い冬籠
    りを過ぎて春を告げる、真っ白な馬酔木の花の
    盛りを見るにつけて、その幸せを心中深く祈り
    つつ、淋しくもなつかしく連想した歌です。

 注・・馬酔木(あしび)=つつじ科の常緑低木。早春に
     白色でつぼ状の小さな花が咲く。葉は有毒。
    そのかみの子=あの頃の娘。昔の恋人あるいは
     自分の方で恋しく思っていた人。

作者・・濱田盛秀=はまだもりひで。詳細未詳。



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2013年03月04日

名歌鑑賞・2132

いさり火は 身も世も無げに 瞬きぬ 陸は海より
悲しきものを
              与謝野晶子 (草の夢)

(いさりびは みもよもなげに またたきぬ くがは
 うみより かなしきものを)

意味・・海の漁火は、身も世も無いほどひどく乱れた
    人の心のように瞬いていました。人間の棲む
    陸地の世界は、海より悲しいものなのに。

 注・・いさり火=漁火。夜の漁で魚を集めるために
     焚く火。
    身も世も無げに=自分の身の上も、世間の手
     前も考えておられないほどひどく取り乱し
     たさまをいう。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。
     堺女学校卒。鉄幹と結婚。歌集「みだれ髪」。
    


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2013年03月03日

名歌鑑賞・2131

きのふかも あられふりしは 信楽の 外山のかすみ
春めきにけり
            藤原惟成 (詞花和歌集・2)

(きのうかも あられふりしは しがらきの とやまの
 かすみ はるめきにけり)

意味・・昨日ではなかったかなあ、冬の訪れを告げる
    霰が降ったのは。なのに、今日はもう信楽の
    外山に霞が立って、すっかり春めいてきた。

 注・・信楽(しがらき)=滋賀県甲賀郡信楽。
    外山=山なみの里に近い辺り。

作者・・藤原惟成=ふじわらのこれしげ。953~989。
     


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名歌鑑賞・2130

(3月2日 名歌鑑賞)

今日ここに 見にこざりせば 梅の花 ひとりや春の
風にちらまし
            源経信 (金葉和歌集・19)

(きょうここに みにこざりせば うめのはな ひとりや
 はるの かぜにちらまし)

意味・・今日、私どもが見に来なかったならば、梅の花は
    誰にも賞美されず、一人寂しく春の風で散ってし
    まったことでしょう。
   
    朱雀院の梅の花を見て詠んだ歌です。

作者・・源経信=みなもとのつねのぶ。1016~1097。正二
     位大納言。




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名歌鑑賞・2130

今日ここに 見にこざりせば 梅の花 ひとりや春の
風にちらまし
            源経信 (金葉和歌集・19)

(きょうここに みにこざりせば うめのはな ひとりや
 はるの かぜにちらまし)

意味・・今日、私どもが見に来なかったならば、梅の花は
    誰にも賞美されず、一人寂しく春の風で散ってし
    まったことでしょう。
   
    朱雀院の梅の花を見て詠んだ歌です。

作者・・源経信=みなもとのつねのぶ。1016~1097。正二
     位大納言。




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2013年03月01日

名歌鑑賞・2129

ちかづきて あふぎみれども みほとけの みそなはすとも
あらぬさびしさ
              会津八一 (鹿鳴集)

(近づきて 仰うぎ見れども み仏の みそなはすとも
 あらぬ寂しさ)

詞書・・香薬師を拝して。

意味・・近寄って仰ぎ観ても、み仏が自分を認めてご覧
    下さることもないこの寂しさよ。

    古仏像の眼は焦点が合わない感じがするもので、
    香薬師の像も切れ長の瞳もやはりそうである。
    み仏が自分を見つめてくれない寂しさを詠む。

    「お偉いさん」に相談事をしたいと思っも、知
    らぬ顔して、うてあってくれない寂しさと同じ
    感じです。
    
 注・・香薬師=奈良の新薬師寺堂内に安置する高さ
     70センチ程の金銅製の立像。ふくよかな
     顔つきに腫れぼったく細められた目つきを
     している。目は焦点が合わない感じがする。
    みそなはす=ご覧になる。

作者・・会津八一=あいづやいち。1881~1956。早大文科
    卒。文学士。美術史研究家。「会津八一歌集」。




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